札幌医科大学分子生物学講座鈴木教授との共同研究です。
患者さんから原発巣および転移巣の検体をご提供いただき、scRNA-seq解析を実施した例です。原発巣と転移巣において、がん細胞と血管内皮細胞の細胞間コミュニケーションが異なっていることを観察しました。1症例の報告であり、何かを結論づけるのは難しいですが、細胞間相互作用に関して示唆に富む観察結果を示すことができたと思います。観察した事象をできるだけ正確に過不足なく記述することを心がけています。
患者さんから治療前後の原発巣および転移巣の計3回の検体をご提供いただき、それらに対してシングルセル解析を非常に深いレベルで実施しました。その結果、患者さんの体内で治療抵抗性を示す細胞集団や遠隔転移を引き起こす細胞がどれであるかといった、がん細胞の進化と適応の様子を詳細に捉えることができました。経時的な検体のscRNA-seq解析が多くの有用な情報をもたらす例として、意義のある結果を示せたと考えております。また、リバイズ作業を重ねたことで、完成度の高い解析に仕上がっています。ご協力いただいた患者さんとご家族、病院スタッフの皆様に心より感謝申し上げます。
Shiraishi R*, Cancila G*, Kumegawa K*, Torrejon J, Basili I, Bernardi F, da Silva P. B. G., Wang W, Chapman O, Yang L, Jami M, Nishitani K, Arai Y, Xiao Z, Yu H, Lo Re V, Marsaud V, Talbot J, Lombard B, Loew D, Jingu M, Okonechnikov K, Sone M, Motohashi N, Aoki Y, Pfister S. M., Chavez L, Hoshino M, Maruyama R¶, Ayrault O¶, Kawauchi D¶.
Cancer-Specific Epigenome Identifies Oncogenic Hijacking by Nuclear Factor I Family Proteins for Medulloblastoma Progression.
Dev Cell 2024;59:2302-2319.e12. (*co-first, ¶co-corresponding)
(press_release)
国立精神神経医療研究センター(現名古屋市立大学)の川内先生らとフランスキュリー研究所のAyrault先生らとの共同研究で、小児髄芽腫発がんマウスモデルにおいて、NFIのエンハンサーハイジャッキングが発がん過程で重要な役割を果たし、それが治療標的となりうることを明らかにした研究です。大作です。各種オミクス解析とシングルセルマルチオミクス解析を担当しました。*Featured Contentに選ばれました!
Gotoh O, Sugiyama Y, Tonooka A, Kitaura S, Minegishi R, Sano M, Amino S, Kosugi M, Furuya R, Tanaka N, Kaneyasu T, Kumegawa K, Abe A, Nomura H, Takazawa Y, Kanao H, Maruyama R, Noda T, Mori S.
Genetic and epigenetic alterations in precursor lesions of endometrial endometrioid carcinoma.
J Pathol. 2024;263:275-287.
(press_release)
がん研究会CPMセンターの森先生らとの共同研究で、子宮内膜がんの前がん病変におけるゲノム異常とDNAメチル化の変化を詳細に解析した研究です。
前澤さんの研究で、牛のリンパ腫(DLBCL)に関する論文です。
田中さんと京都大学(横川研究室)の共同研究です。
(press_release)
乳がん細胞株23株のATAC-seq解析から、FOXA1とGRHL2のモチーフ集積の有無がluminal型、basal-like型、mesenchymal型の3群を規定していることが示唆されました。特にGRHL2の有無によりTNBC株がbasal-likeとmesenchymalに二分されている点が興味深いです。
Fox Chase Cancer Centerの村山さんらとの共同研究です。
東京大学産婦人科の曾根先生との共同研究で、井上先生の学位論文です!子宮体癌におけるヒストン修飾酵素のPRMT6の役割について解析しました。
家里さんのYouTubeの利用に関する研究です。
宮田さんの前職でのお仕事です。
順天堂大学病理・腫瘍学講座の折茂先生、目澤先生との共同研究です。
順天堂大学病理・腫瘍学講座の折茂先生、安川先生、小山先生らとの乳がんのCAFに関する共同研究です。エピゲノム解析の一部を担当しました。
粂川さんと札幌医科大学鈴木先生、韓国のLee先生らとの共同研究です。
Miyata K, Zhou X, Nishio M, Hanyu A, Chiba M, Kawasaki H, Osako T, Takeuchi K, Ohno S, Ueno T, Maruyama R, Takahashi A.
Chromatin conformational changes at the human satellite II contribute to the senescence phenotype in the tumor microenvironment.
Proc Natl Acad Sci USA. 2023;120:e2305046120.
(pdf)
(press_release)
細胞老化研究部との共同研究です。私たちは主にエピゲノム解析とシングルセル解析を担当しています。特に、宮田さんがサテライトIIなどの反復配列領域のクロマチンアクセス性を定量するためのscATAC-seqデータ解析アルゴリズムを開発しました。
Kitajima H*, Maruyama R*, Niinuma T, Yamamoto E, Takasawa A, Takasawa K, Ishiguro K, Suzuki R, Tsuyada A, Idogawa M, Tange S, Toyota M, Yoshido A, Kumegawa K, Kai M, Tokino T, Osanai M, Nakase H, Suzuki H.
TM4SF1-AS1 inhibits apoptosis through stress granule formation in cancer cells.
Cell Death Dis. 2023;14:424.(*co-first)
(pdf)
丸山が札幌医大在籍中に開始したlncRNAに関する研究で、鈴木先生、北嶋先生が引き継いでくださりました。慢性胃炎や胃がんで発現が亢進しているこのlncRNAに関して、様々な機能解析を行いました。lncRNAの奥深さを感じます。
Kumegawa K*¶, Yang L*, Miyata K, Maruyama R.
FOXD1 is associated with poor outcome and maintains tumor-promoting enhancer-gene programs in basal-like breast cancer.
Frontiers in Oncology. 2023;13:1156111. (*co-first)
(github page)
(pdf)
粂川さんが学生時代から温めていた研究テーマを、楊さんと協力して論文化したものです。TCGAのRNA-seqデータをGaussian mixture model(GMM)という手法を用いて解析し、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)のサブタイプおいてのみ発現量が二峰性のパターンを示し、かつ予後が分かれるという遺伝子群を抽出してきたものです。バイオインフォマティクスのスキルがふんだんに活用されています。そこで同定されたFOXD1について、細胞株を用いて機能的に解析しています。本研究はTNBCの層別化や治療標的の同定を目指したものです。粂川さんが責任著者として執筆・作図・リバイズ作業のほぼ全てを行いました!
Tanaka M¶, Homme M, Teramura Y, Kumegawa K, Yamazaki Y, Yamashita K, Osato M, Maruyama R, Nakamura T¶.
HEY1-NCOA2 expression modulates chondrogenic differentiation and induces mesenchymal chondrosarcoma in mouse.
JCI insight. 2023;8:e160279. (¶co-corresponding)
(pdf)
(summary)
(press_release)
本研究では、AYA 世代に発生する希少な軟骨性悪性腫瘍である間葉性軟骨肉腫のモデル化に世界に先駆けて成功し、融合遺伝子HEY1-NCOA2による軟骨細胞分化への干渉機構を明らかにしました。転写因子を含む融合遺伝子がどのようにエピゲノム(シストローム)に作用し細胞を変化させていくか、詳細に記述しています。東京医科大学(前発がん研究部部長)中村卓郎先生との共同研究で、丸山ラボではエピゲノム解析やシングルセル解析を実施しました。ゲノム異常とエピゲノム変化の関係性を示す重要な仕事であると考えています。詳しくは上記プレスリリース文章をご参照ください。
田中主任研究員による総説です。
Tanaka M¶, Chuaychob S, Homme M, Yamazaki Y, Lyu R, Yamashita K, Ae K, Matsumoto S, Kumegawa K, Maruyama R, Qu W, Miyagi Y, Yokokawa R, Nakamura T¶.
ASPSCR1–TFE3 orchestrates the angiogenic program of alveolar soft part sarcoma.
Nature Communications. 2023;14:1957. (¶co-corresponding)
(pdf)
(press_release)
AYA世代に認められる難治性希少がんである胞巣状軟部肉腫の原因となる融合遺伝子ASPSCR1-TFE3が、どのようにして特異的な病態を引き起こすのかを明らかにしました。がん細胞におけるゲノム異常がシストローム(スーパーエンハンサー)をリプログラミングして、それが周囲の血管内皮細胞との相互作用に影響を与えがんを進展させていくダイナミックなプロセスを詳しく解明しています。この研究は東京医科大学の中村卓郎教授(前発がん研究部部長)との共同研究で、田中主任研究員のこれまでの研究の集大成となるお仕事です。詳しくは上記のプレスリリース文章をご参照ください。
Saeki S*, Kumegawa K*, Takahashi Y, Yang L, Osako T, Yasen M, Otsuji K, Miyata K, Yamakawa K, Suzuka J, Sakimoto Y, Ozaki Y, Takano T, Sano T, Noda T, Ohno S, Yao R, Ueno T, Maruyama R¶.
Transcriptomic intratumor heterogeneity of breast cancer patient-derived organoids may reflect the unique biological features of the tumor of origin.
Breast Cancer Research. 2023;25:21. (*co-first)
(github page)
(summary)
(pdf)
乳がん患者さんから樹立したオルガノイド(PDO)10株において、がん細胞の腫瘍内不均一性(ITH)をscRNAseq解析を用いて評価した仕事です。オルガノイド株においては、確かにtranscriptome のITHが認められ、そのITHは元の患者検体のITHをある程度保持していることが確認されました。またPDO間で共通するITHと各PDOに固有のITHが認められ、ITHを理解することの重要性が示唆されました。我々のオルガノイドを解析した初めての報告で、研究室内外の多くの方々のご協力・ご指導に感謝いたします。また研究室で検体処理やオルガノイド培養の体制・技術の立ち上げに尽力してくれた佐伯さんに感謝します。彼の学位論文でもあります。
Kumegawa K*, Saeki S*, Takahashi Y*, Yang L, Osako T, Nakadai T, Mori S, Noda T, Ohno S, Ueno T, Maruyama R¶.
Chromatin profiles identify a novel subgroup of ER-positive breast cancer with reduced accessibility of estrogen receptor responsive elements.
British Journal of Cancer. 2023;128:1208-22. (*co-first)
(github page)
(summary)
(pdf)
乳がん臨床検体のATAC-seq解析により、エストロゲン受容体(ER)陽性乳がん患者を3つのグループに層別化した研究です。特にグループ1とグループ2では、通常の免疫染色ではERの発現に違いは認めないけれども、ATAC-seq解析でERの標的領域を詳細に見ると二群間で大きな違いが認められました。エピゲノムレベルで見なければ分からないこの患者間の違いの機能的・臨床的意義を、今後も追求していきたいと考えています。
ERRというオーファン受容体の機能を精密に解析した論文です。中太研究員による海外研究機関との共同研究で、丸山ラボではオミクス解析の一部をお手伝いしました。大作です!
頻度の低いER変異(K303R)の機能的意義について、詳細に解析した仕事です。中太さんのexpertiseが濃縮された論文です。
Kumegawa K*, Takahashi Y*, Saeki S*, Yang L, Nakadai T, Osako T, Mori S, Noda T, Ohno S, Ueno T, Maruyama R¶.
GRHL2 motif is associated with intratumor heterogeneity of cis-regulatory elements in luminal breast cancer.
NPJ Breast Cancer. 2022;8:70. (*co-first)
(github page)
ヒト乳がんにおける腫瘍内のがん細胞のheterogeneityを、エピゲノムの観点から(scATAC-seqを用いて)解析しようと試みた研究です。Luminal乳がんの患者さんで、免疫染色ではER陽性(Allred score8点)であるけれどもオープンクロマチン領域のERのmotif enrichmentが低下している細胞が混在している症例があり、このような細胞集団はERへの依存性が低下しており、将来内分泌療法に抵抗性となりうる細胞なのではないかと想像しています。まだまだ観察・推測の域を出ていませんが、研究室として目指している方向に向けての第一歩を踏み出せたと考えています。
東京大学医科学研究所の山田先生との共同研究です。がん細胞においては、oncogeneシグナルが効いていると、山中4因子によるリプログラミングが障害されるという現象と、それを逆に利用してがん細胞が依存しているシグナルを同定するという、大変興味深いコンセプトのお仕事です。
中太研究員による海外研究機関との共同研究です。
札幌医科大学分子生物学講座の鈴木先生らとの共同研究です。丸山が札幌医科大学に在籍中に着目していたlncRNA DLEU1に関する研究の続報です。DLEU1は多数のバリアントが存在し、大変興味深いlncRNAです。
各種がんで高発現が認められるサテライトII RNA(非コードRNA)の病的意義を追求した仕事です。老化した細胞でもサテライトRNAの発現が亢進しており、それがCTCFに結合しその機能の一部を阻害することを見出しました。CTCFはゲノム構造の維持に必要な非常に重要な遺伝子の一つですが、それとサテライトRNAが相互作用しうるということは大変興味深い知見です。細胞老化プロジェクトの宮田さん、高橋先生らとの共同研究で、主にATAC-seqなどのNGS解析の一部をお手伝いさせて頂きました。
遺伝子セットではなく領域セットの特徴を抽出するためのアルゴリズムです。各種エピゲノム解析が行われるようになり、ゲノム調節領域(cis-regulatory element)にアノテーションを付与する作業は、今後ますます重要になると思われます。CPMセンター森先生との共同研究です。
札幌医科大学分子生物学講座の鈴木先生らとの共同研究です。
in-situで増幅と蛋白発現を同時に可視化できるGPA法という手法を用いて、乳がん組織におけるHER2増幅+発現の腫瘍内不均一性と臨床情報との関連を解析した貴重な研究です。HER2増幅と蛋白発現に乖離の認められる症例もあり、大変興味深いです。腫瘍内不均一性(intra-tumor heterogeneity)を理解することの重要性を示唆しています。埼玉県立がんセンター(前がん研有明病院病理部)堀井先生らとの共同研究です。
ヒストン修飾酵素であるEZH2とG9aを阻害剤を用いて同時に抑制することにより、多発性骨髄腫に対して抗腫瘍効果をもたらします。大変興味深いことに、これらの阻害は内在性レトロウイルス(ERV)を活性化させインターフェロンシグナルを誘導します。エピゲノム創薬の可能性を感じます。札幌医科大学分子生物学講座の鈴木先生、石黒先生らとの共同研究です。
実験病理部の野澤さんとがん生物部の斎藤先生が中心となり、最近注目の液-液相分離について、がんの視点からまとめてくださった総説です。染色体やクロマチンなど、がん研究所の基礎部門は層が厚いです。
大腸がん検体のRNA-seqデータから血管内皮細胞におけるAEBP1の発現増加を見出し、その機能的役割について解析した仕事です。丸山が札幌医大在籍中に「ゲノム支援」のお力を借りて実施したRNA-seqのデータを、萬先生や山本先生らが見事にまとめてくれました。ありがとうございました。札幌医科大学分子生物学講座の鈴木先生らとの共同研究です。
がん生物部斎藤先生らとの共同研究です。
Ohka F, Shinjo K, Deguchi S, Matsui Y, Okuno Y, Katsushima K, Suzuki M, Kato A, Ogiso N, Yamamichi A, Aoki K, Suzuki H, Sato S, Rayan NA, Prabhakar S, Göke J, Shimamura T, Maruyama R, Takahashi S, Suzumura A, Kimura H, Wakabayashi T, Zong H, Natsume A, Kondo Y. Pathogenic Epigenetic Consequences of Genetic Alterations in IDH-wild-type Diffuse Astrocytic Gliomas. Cancer Res. 2019; 79:4814-4827.
Niinuma T, Kitajima H, Kai M, Yamamoto E, Yorozu A, Ishiguro K, Sasaki H, Sudo G, Toyota M, Hatahira T, Maruyama R, Tokino T, Nakase H, Sugai T, Suzuki H. UHRF1 depletion and HDAC inhibition reactivate epigenetically silenced genes in colorectal cancer cells. Clin Epigenetics. 2019;11:70.
Johmura Y, Maeda I, Suzuki N, Wu W, Goda A, Morita M, Yamaguchi K, Yamamoto M, Nagasawa S, Kojima Y, Tsugawa K, Inoue N, Miyoshi Y, Osako T, Akiyama F, Maruyama R, Inoue J, Furukawa Y, Ohta T, Nakanishi M. Fbxo22-mediated KDM4B degradation determines selective estrogen receptor modulator activity in breast cancer. J Clin Invest. 2018;128:5603-5619.
Wu W, Rokutanda N, Takeuchi J, Lai Y, Maruyama R, Togashi Y, Nishikawa H, Arai N, Miyoshi Y, Suzuki N, Saeki Y, Tanaka K, Ohta T. HERC2 promotes BLM and WRN to suppress G-quadruplex DNA. Cancer Res. 2018;78:6371-6385.
Ishiguro K, Kitajima H, Niinuma T, Ishida T, Maruyama R, Ikeda H, Hayashi T, Sasaki H, Wakasugi H, Nishiyama K, Shindo T, Yamamoto E, Kai M, Sasaki Y, Tokino T, Nakase H, Suzuki H. DOT1L inhibition blocks multiple myeloma cell proliferation by suppressing IRF4-MYC signaling. Haematologica. 2018;191262.
Nishiyama K, Maruyama R, Niinuma T, Kai M, Kitajima H, Toyota M, Hatanaka Y, Igarashi T, Kobayashi JI, Ogi K, Dehari H, Miyazaki A, Yorozu A, Yamamoto E, Idogawa M, Sasaki Y, Sugai T, Tokino T, Hiratsuka H, Suzuki H. Screening for long noncoding RNAs associated with oral squamous cell carcinoma reveals the potentially oncogenic actions of DLEU1. Cell Death Dis. 2018;9:826.
Shindo T, Niinuma T, Nishiyama N, Shinkai N, Kitajima H, Kai M, Maruyama R, Tokino T, Masumori N, Suzuki H. Epigenetic silencing of miR-200b is associated with cisplatin resistance in bladder cancer. Oncotarget. 2018;9:24457-24469.
Shindo T, Shimizu T, Nojima M, Niinuma T, Maruyama R, Kitajima H, Kai M, Itoh N, Suzuki H, Masumori N. Evaluation of Urinary DNA Methylation as a Marker for Recurrent Bladder Cancer: A 2-Center Prospective Study. Urology. 2018;113:71-78.