研究を行ううえでの最終目標は、より良い診療を提供するための新しい知見を見いだすことにあります。一方で「がんとは何か?」という大きな問いが常に頭の中にあり、がんの本質に迫るという純粋な科学的欲求を徹底的に追求したい気持ちもあります。これらは相反するものではなく、今後より良い診療を提供するためにはがんの本質をもっと知る必要がある、そうすることにより現在の医療を改善しうる、と信じて研究を進めます。
がんのバイオロジーは実に複雑です。がん細胞の中では遺伝子発現やシグナル伝達が緻密に制御されており、その巧みな振る舞いに驚かされ神秘性すら感じます。また腫瘍組織においては、個々の細胞が多様な特性と役割を持って活動しており、まさに人間の社会そのものに見えます。妄想を楽しみ、新しい発見に感動しながら、真実を追い求めていく、そのようなスタンスを大切にします。真実を徹底的に追究していくことにより、がん治療のブレークスルーを見出すことができると信じています。
がんを克服するために何ができるのか、それを知ることが私たちの最終目的です。あらゆる手法を駆使して、がんに生じているゲノムやエピゲノムの変化を総体的・俯瞰的に捉え、その普遍性と脆弱性を理解し、それを実臨床に活かすための方法を模索していきます。俯瞰的な視点からがんの本質を捉え、真に臨床に還元できるような知見を得るために何をすべきなのか、それを常に問い続けます。
私たちが一人でできることは限られています。しかし同じ志を持った仲間が集まれば、何かを変えられるかもしれません。分子生物学者、生化学者、バイオインフォマティシャン、臨床医、病理医など各分野のエキスパートが集まり、議論し協力しあいながら同じ目標に向かって進んでいく、がん研にそのような場を作ることを目指します。「がん」を何とかしたいという共通の想いを持つ仲間が、総力を結集して研究に臨みます。
がん研究会の基本理念は「研究の全ては研究者のためのものではなく、患者さんのためのものである」です。研究者全員が楽しく研究し、真実・サイエンスを徹底的に追究する、これは研究を進めるうえで最も重要でありますが、その全てはがん患者さんのためにあると考えています。「一人でも多くのがん患者さんを救うこと」それが、この研究室が存在する唯一にして最大の理由です。この理念に共感し一緒に挑戦して下さる仲間を求めています。
がんのバイオロジーの本質を理解することにより、がん診療に貢献しうる知見を見出すことを目標としています。